オーケストラにおける珍しい打楽器についてのお話

新交響楽団 桑形 和宏氏

新交響楽団に入団して約17年、桑形氏が今まで演奏してきた曲の中で、珍しい打楽器と それにまつわるお話を、マーラーの交響曲を中心にテープ等による音楽鑑賞を交えて講義していただきました。


 マーラーの交響曲は楽器の用法に革新的であり、ティンバニー、小大太鼓、シンバル、トライアングル、ドラ、鉄琴などよく知られた打楽器のほか数々の珍しい打楽器が登場します。 マーラーの交響曲 第1番では、シンバル付き大太鼓が登場します。譜面では「シンバルは大太鼓の上に固定して一人で演奏するように」との注釈があるそうです。
 これに対しチャイコフスキーの悲愴交響曲の3楽章に4発のみシンバルと大太鼓がありますが、ここでは演奏方法として「シンバルは大太鼓にくつけてはいけない」との注釈があるそうです。これはシンバル奏者と太鼓の奏者は同じではいけないという解釈をしているそうです。このようにわざわざ注釈が付いているのはチャイコフスキーがマーラーに自分の曲の指揮を頼むことが何度かあったそうですが、そのときにマーラーの奏法とは明らかに変えたいという意図あったのだろうということがうかがえるそうです。

ルーテ (むち)は、通常木の板をたたき合わせますが、マーラーの 第2番の交響曲では竹を裂いた物をたたきます。またこの曲では、ティンパニが10台も必要になるというのも驚きです。
マーラーの交響曲第4番では、すずが登場します。
通常はかぐらすずを使用しますが、学校で使うすずを数個たばねて、鳴り遅れのないよう下方からたたき音の出し方を工夫しています。
すずに関しては、最初に使用したのはおそらくモーツアルトの「郵便馬車」のシーンだろうとのお話でした。

マーラーの交響曲第5番では、シンバル付き大太鼓とホルツクラッパー (木片) が登場します。
ここでのシンバル付き大太鼓は交響曲の第1番と同様に大太鼓の上にシンバルを固定して一人で両方一緒にたたきます。
ホルツクラッパーは木を鳴らす楽器です。

交響曲第6番でマーラーは、ハンマーと遠くで聞こえる低音の鐘とヘンデルグロッケンを登場させました。
ハンマーは斧で打ち込む音を表現するために工事現場で使用されるかけやで木の箱の上に置いたベニヤ板をたたきます。 (このときは音響効果よりも視覚効果のほうが大きかったとか・・・)
遠くに聞こえる様に低音の鐘は鉄板を木槌でたたきます。
放牧牛のすずを表現するために複数の牛のすずを楽屋裏で不規則に鳴らしながら歩き回って表現します。

マーラーの他では チャイコフスキーの序曲1812年で大砲と鐘にがでてきます。
大砲の音はこの時代の大砲の音を表現する為に段ボールを園芸用のさおや平たい木でたたくことで実現するそうです。鐘はクレムリンの鐘を表現するために鉄道のレールをつなぐ鉄板を複数つり下げて鳴らします。

既存する打楽器をただ演奏するだけでなく、楽譜に指定されたそれぞれの音色を限りなく忠実に表現するために創意工夫されて、いろいろな“もの”が打楽器に変身し演奏されています。このことを知ることは音楽を聞く時のまた違った楽しみにもなるとおもいます。

講義の後、ヴァレーズのイオニゼーションに出てくるライオンの声の楽器を教えていただき、作りましたのでご紹介します。

用意する物

  1. 円筒の缶
  2. 丸い木の棒 (手に持つくらいの大きさ)
  3. タコ糸(振り回せるぐらいの長さ)
  4. つま楊枝

作り方

  1. 缶の底の中央にきりで穴を開ける
  2. 上で空けた穴にたタコ糸を通して缶の中側で、適当な長さに切ったつま楊枝をタコ糸にしっかり止める
  3. もう一方のタコ糸の先は 丸い木の棒の上方に溝を彫りタコ糸がまわるけれど外れない程度に巻いてしっかり止める

鳴らし方

方法1.
   タコ糸が巻き付いている木の棒を水につけて濡らしておき、 木の棒を持って缶をぐるぐる回す。

方法2.
   缶を持って木の棒のついたタコ糸を濡れタオルで強く引っ張りながらこする。

缶の大きさによってライオンの音になったりかえるの声になったり・・・いろいろためしてみるのも楽しいようです。


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