1998年度

第7回ミューズキャット

***リュート製作者による、よい楽器を作る上での苦労話や、リュート音楽について***

リュート工房 渡辺広孝氏

■渡辺広孝氏について

楽器製作は作っただけでは終わらない演奏をする楽しみがあります、と語る渡辺氏は、おもに16世紀〜18世紀のリュートを復元しているリュート製作者です。
クラシックギターの演奏をしていてクラシックギターのために編曲されたリュートの曲を弾くうちにリュートに興味を持つようになったそうです。そしてキットを購入して製作してみたのが、製作者になるきっかけに・・・。リュートは他の楽器とは違い、材料となる木材選択に幅があり、材質を変えることでそれぞれ音質の違うリュートができあがるのもリュート製作の魅力の一つとか。また、リュートの中程にあるロゼッタの彫刻は端麗繊細でこれだけでも芸術的価値がありそうですが、これを彫るのが渡辺氏の楽しみでもあるようです。

■リュートの歴史

リュートは12世紀にアラビアからヨーロッパに伝わってきました(日本では、7世紀にびわとして伝わってきたようです)。
その当時は弦が4コース(2列で1コース)のリュートで、15世紀には5コース、16世紀には6コース、17世紀には7コースから14コースと弦の数も次第多くなっていき、17世紀半ばに製作は中断されました。
当時のヨーロッパの演奏の場は、音が小さくても残響がかなりあったので、音量よりも音色を楽しむ楽器が必要とされていました。しかし、時代の必要とする演奏形態の変化とともにその姿は消え、現在ではマンドリンとして残っています。

■リュートの構造としくみ

リュートの側板は、柔らかい材質から硬い材質までいろいろな材料を試せてその材料でしか出ない音が試せるのが特徴です。主な材質として、かえで、さくらんぼの木、ぞうげ、いちい(一位)などがあげられます。リュートの側板は数枚の板をつなぎ合わせていちじく形になっているので、材料の板も大きな一枚板を使わず、角材をスライスして作り、渡辺氏はその連続する木目を利用して側板にきれいな模様を創り出しています。その角材の残りも、小さな部品を作れるそうです。少量で有効に無駄なく使えて環境にやさしい楽器 !!(渡辺氏強調)というわけです。
表面板は薄いもみの木を使い、裏には力木をつけ弦の張力に耐えられるようにします。
この力木は高さや形によって音色にも影響します。
表面板の中心部にあるロゼッタは、表面板そのものを1ミリほどの厚さにして円形の彫刻を施していきます。
リュートの最大の特徴である折れ曲がった柄は、50cm〜2mまでサイズは様々で、ガット弦を巻いてフレットに
しています。そのためフレットの調整が可能です。
その折れ曲がった形は強いテンションをうまく支える働きをしていますが、当時はその形が格好がいいとされていたとか、演奏の時に隣の人のじゃまになりにくいとか、暖炉のそばで演奏する寒い地方の人は柄の部分が暖まりにくいように、などの説があり、当時の演奏の様子を思い浮かばせてくれます。

■演奏

お話の合い間に阿矢谷充氏によるリュート演奏を聞かせていただきました。
6コース、10コースリュートでのそれぞれ繊細な音色で、フランチェスコ・ミラ、ダウランドの曲などを披露していただきました。

阿矢谷氏の演奏は5月に開かれる東京リュートの会のコンサートでも聞くことができます。


ミューズキャットの案内に戻る
あむりすホームページに戻る